経済産業省のDXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~が公開した「2025年の崖」に直面している現在、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。特に中小企業にとって、この変化に適応することは生き残りをかけた重要な課題が山積しています。中でも、属人化した知識や技術が組織の大きなリスクとなっている現状を踏まえ、本記事では、中小企業が競争力の低下や成長の鈍化を回避するための重要な要素として、「暗黙知の形式知化」に焦点を当て解説します。目次暗黙知の形式知化で「2025年の崖」を乗り越える組織内で暗黙知がどこに存在するかを特定し、従業員との対話や観察を通じた情報収集、得られた情報を体系的に整理するためのデジタル化することで形式知化し、個人の知識に依存するのではなく、組織全体で知識を共有し活用する文化・企業風土を築くことが重要です。これにより、経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」(2025年までに老朽化したシステムの刷新やデジタル技術の活用が進まない企業が競争力を失う可能性など)を乗り越え、DXを加速させる第一歩となります。本記事を読み進めることで、「暗黙知の形式知化」の具体的な手法と成功事例を詳しく理解していきましょう。暗黙知の形式知化がDXを加速企業の競争力を維持し、成長を続けるためには、個人に依存する知識や技術を組織全体で共有することが不可欠です。これにより、業務の効率化、イノベーションの創出、人材育成の効果を高めDX化を加速することができます。・暗黙知個人の経験や直感に基づく知識で、言葉や文書で表現することが難しい知識を指します。感覚や直感、コツ、勘などとも呼ばれます。個人の経験に基づいており、他者への伝達が難しいのが特徴です。例)自転車の乗り方、スポーツの技術、熟練工の職人技、顧客対応のコツ、クリエイティブな思考など・形式知言葉や文書、データ、図表、数式などを使って明確に表現できる知識です。共有や他者への伝達が容易で、マニュアルや手順書の展開、データベース化して参照するなど、誰でも理解・活用できます。例)教科書の内容、取扱説明書、データベースの情報、就業規則、数式、法則など関連記事:総務部門をデータドリブンな戦略部門へ!生成 AI×DX 推進で業務変革ナレッジマネジメントフレームワークの活用個人の持つ暗黙知を組織全体で共有し、新たな知識を生み出すため「暗黙知を形式知化」する際に活用される、ナレッジマネジメントのフレームワークSECI(セキ)モデルは「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」の4つのプロセスで構成されており、これらのプロセスを繰り返すことで組織内の知識共有が進み、創造と実践につながります。SECIモデルを図で表現すると、以下のようなになります。出典:NPO法人SECIプレイス「SECIモデル」共同化(Socialization)暗黙知同士の相互作用により、新たな暗黙知が生まれるプロセスです。例)師弟関係における技術伝承、OJTなど表出化(Externalization)暗黙知を概念やモデルなど、言語化された形式知に変換するプロセスです。例)マニュアルの作成、プレゼンテーションなど連結化(Combination)形式知同士を組み合わせ、新たな形式知を生み出すプロセスです。例)既存の知識を組み合わせた新しい製品開発、データ分析など内面化(Internalization)形式知を個人に取り込む、つまり自分のものにする、定着化のプロセスです。例)マニュアルを熟読し、実際の業務で実践することなど4.内面化で留まることなく、SECI(セキ)モデルの4つのプロセスを常に回していき、暗黙知の形式知化を進めていきましょう。中小企業が競争力の低下や成長の鈍化につながる「2025年の崖」を乗り越え、さらにDX化の推進・成功のためには、組織内に蓄積された暗黙知を形式知化することが重要です。暗黙知の形式知化は、「知識の共有と継承が容易になる」「業務効率化」「イノベーションの創出」「効果的な人材育成」など、様々な利点が生まれます。参考記事:暗黙知を形式知化する5つのステップとRAG活用法:2025年の崖対策ガイド暗黙知の形式知化:業種別事例・製造業の事例金属加工を営む企業では、熟練工の技術を3Dスキャンとモーションキャプチャーを使って可視化し、属人買いしていた技術をデータ化しました。若手社員の技術習得に活用することで、技術習得工数の削減と生産性の向上につながった。・HR領域の事例人材紹介会社では、優秀な採用担当者の選考プロセスをAIで分析し、選考基準を明確化した。この結果、経験の浅い新人従業員でも成約率の上昇が顕著となり、顧客満足度も向上した。・小売業の事例東北地方の地域密着型のスーパーマーケットチェーンでは、特定店舗に在職しているベテランの店長独自の売り場レイアウトにより売り上げた突出していた。このノウハウをデジタルツインで再現。これを基に各店舗のレイアウトを最適化したところ、各店舗の売上や顧客満足度の差異が平準化でき、チェーン店としてのブランディング戦略にも大きな影響を与えた。まとめ暗黙知の形式知化は、中小企業がDXを成功させ、「2025年の崖」を乗り越えるための重要な戦略です。属人化した知識を組織の資産として活用することで、競争力の向上と持続的な成長が可能になります。競争力の低下や成長の鈍化を回避するため、暗黙知の形式知化に取り組んでいきましょう。growvisionの伴走支援DX化の取り組みは一度きりのプロジェクトではなく、段階を追って実現していく継続的な取り組みです。growvisionのDX推進伴走支援サービスは、暗黙知の形式知化に伴うSECIモデルの運用やDX推進にかかわる様々なプロセスについて伴走してご支援いたします。また、プロジェクトの実施だけでなく、従業員のデジタルスキル向上のための教育や運用支援、短期・中期・長期とフェーズ毎の経営戦略におけるビジョン策定まで伴走することで、持続可能なDX推進体制の確立をご支援します。